二十四節気 小雪 ~御歳暮のマナー~「ちょっと待って!そこ、見られてますよ!」
2022年11月22日より、二十四節気では小雪(しょうせつ)に入りました。太陽の黄経は240度。そして、間もなく御歳暮を贈る時期にも入りますね。
私は、季節の挨拶など、古式ゆかしい年中行事は大切だと思っています。
それには理由があります。
ずいぶん以前ですがこんなことがありました。ちょうど取引先の会社にお歳暮の品を持って訪問したときのこと。
この会社は受付窓口の方が、お客様の要件を受けて中にいる担当の方に引き継ぐスタイルをとっており、訪問した側からはそのフロアの様子がよく見えます。
その日担当の方は不在だと聞いていたので、受付窓口の女性の方に、
「いつも○○さんはじめ、皆様にお世話になっております。こちらは心ばかりですが、日頃の感謝のお印です。皆様でお召し上がりください」
と、『御歳暮』と記載した菓子折をお渡ししました。
その女性は「はい、有難うございます」と事務的に品物を受け取った後、傍らのキャビネットに品物をポンと置いて、目の前の作業を続けました。
しばらくして帰ろうとして受付窓口のほうを見たとき、その品物は彼女の斜め後ろの棚に置かれたまま、その上に別の書類が積み上がっていました。
・・・私は、内心とてもがっかりしました。
私なりに、その会社のフロアにいらっしゃる人皆に行き渡るように、心をこめて選ばせて頂いた品です。品物の外装もマナーに則り思いをこめました。
「やはり、担当の方がいらっしゃるときに直接お渡ししたほうがよかったかしら…」
「この品物は、果たしてこのフロアの担当者や責任者に届くのだろうか」
皆さまでしたらどのように思われますか。
日本の慣習では、人から品物を頂いた際は作法に則り大切に扱います。
もともと贈答のルーツは、神様へのお供え物だったと言われています。農耕民族にとって、天候などによる災害や凶作は命をつなぐために直面した深刻な問題でした。そうした天災を少しでも避けたいという願いから神様にいっそうの加護を祈り、神饌(しんせん)と呼ばれる供物を捧げたのです。
神へ捧げた後、その座に同席した者たちで供物を分け合い、飲食を行いました。これを直会(なおらい)と言います。
贈り物を頂いた際の受け取り方や御礼の伝え方ひとつで、随分と印象が変わるものです。贈答の意味を知ると、自然に言動や所作に表れます。
一方で、社員一人一人が会社の「顔」なのだという意識を持つことは重要なことですね。
「どうすればお相手に好印象を与えることができるのか」
「どうすればお相手の気持ちを迷わせず信頼して頂けるのか」
オフィスでの忙しい場面であればなおさらです。その所作ひとつでお相手に好印象を与えることができます。
このようなことに意識を働かせることは、仕事や人間関係を円滑に進めるために、会社員でなくとも、自営業の方、主婦の方、学生の方、すべてにあてはまることと言えるでしょう。
歴史を遡ると、中世以前の時代からヨーロッパでは、相手に好感を与えることが処世術の基本でした。大陸は国同士が隣接しており、様々な慣習や文化を持つ民族が行き来する場所だったからです。
”Please.” “Thank you.” “Excuse me.”
主に良家の子女の教育では、この言葉が使えなければ、子どもであっても親は決して要求に応じることはないという環境で育てられるのが一般的です。
一方、日本はもともと島国で、”阿吽(あ・うん)の呼吸”というものが存在していました。口にせずともお互いに察し合える中でその文化を育んできたのです。
日本人は家庭教育の中で厳しく躾けずとも、特定の階級の人だけでなく一般庶民が、「どうぞ」「ありがとう」「ごめんなさい」という言葉を自然に使うことができたと言われています。
しかしながら、現在の日本では状況が変わってきました。海外の方との交流が増え、日本人同士の交流においても、日本人の意識改革が必要な場面が多く見受けられます。
”相手に好感を与える”ことは、”いかにお相手の役に立てるか”と言い換えてもよいと思います。
「自分の担当ではないから関係ない」
こういった仕事の仕方は、いわば木を見て森を見ずの状態。
自分で考えず、保守的な意見と指示待ちばかり。言われたことだけを作業としてこなし主張や要求のみを行う社員は、会社では不要な人材。いずれAIにとって変わられる可能性が高いと言えるでしょう。
逆に、依頼を受けた仕事から、『依頼主の希望を読み取り、全体の中で自分はどんな動きをすれば依頼主が助かるのかを提案実行できる人=(経営側や上司にとってみれば)自分の頭脳の分身となって動いてくれる存在』は、当然重宝がられます。
「働く」の語源のひとつ=「傍(はた)を楽にする」
リモートワークやリモート授業などが増えた世の中で、会議での席次がなくなり、発言の仕方も変わってきました。全体の意識よりも、個人の意識が優先される場面が多くなったと思います。
そのような世の中では、とりわけ、自分が“自分株式会社”の社長だという意識で責任を持ち、世の中と向き合う必要があります。
「自分の働きがどのように世の中の役に立っているのか」
ここで意識を転換できる方は必ずや自立でき、生き残ることでしょう。
そして、古式ゆかしい作法や原理原則はいわば”木の根っこ”。その上に時代の変化に柔軟に対応する力が備われば、木はすくすくとまっすぐに成長します。多少の雨風が来ても、しなやかに受け流し倒れることがありません。
より詳しい内容は、『お歳暮・お中元のマナー』のYouTubeでお伝えしていますので、贈り方の参考にして頂ければ幸いです。
最後までお付き合い頂き、有難うございます。
ユウキアユミワールドアカデミー
クォンタムヴォイスアカデミー
校長 由結あゆ美