二十四節気“啓蟄(けいちつ)” – 美しい日本語の威力
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3月5日から、二十四節気の一つ「啓蟄」の時期に入りました。
「啓蟄」は蟄虫(冬ごもりの虫)が戸を啓いて出てくる意で、冬眠していた虫が地中からはい出してくる頃を言います。
太陽の黄経(黄道の一点と春分点とがつくる角度)は345度。
二十四節気“啓蟄”の期間に相当する七十二候
[初候 3月5日~9日頃]
蟄虫啓戸
すごもりむしとをひらく
(虫が地中からはい出してくる)
桃始華
もも はじめてはなさく
(桃の花が咲きはじめる)
[次候 3月10日~14日頃]
桃始笑もも はじめてさく
(桃の花が咲きはじめる)
倉庚鳴そうこう なく
(ウグイスが鳴きはじめる)
[末候 3月15日~19日頃]
菜虫化蝶
なむしちょうとなる
(青虫が羽化してチョウになる)
鷹化為鳩
たか けして はととなる
(春の気を感じて、タカがカッコウに姿を変える)
三月の異名
三月の異名は、弥生が最も一般的です。
草木の芽吹く「弥生(いやおい)」から「やよい」となったと言われています。
いや(弥)=いよいよ、ますます
おい(生)=生い茂る、草木が芽吹く
の意味があります。
三月の異名は、他にも、花月、桜月、桃月、花見月、雛月、蚕月(さんげつ)など、花の呼び名も多く、華やかさ、香り立つような生命の息吹を感じます。
日本の美について書かれた伝書『風姿花伝』
「秘すれば花」「初心忘るべからず」などの名言でも有名な室町初期の能役者 世阿弥は、舞台の魅力を花にたとえてその真理を追求しています。伝書に『風姿花伝』『花鏡」『至花道』などと花という文字を使った題名が少なくないのもこの理由によると考えられています。演劇の世界だけではなく、時代を超えて、私たちの日常やビジネスにも大いに取り入れることのできる物の見方だと思います。
「花」は、私たちの心に新たな気づきをもたらしてくれます。
季節の挨拶
手紙をしたためる際の季節の挨拶や締めの言葉にも、
「春色にわかに満ち」
「菜の花はいまをさかりと咲き誇り」
「花どきのならい、とかく気候不順のおりから」
などの言葉がよく使われます。
声と美しい言葉の威力
先日、タクシーに乗ったとき、運転手の方が、「今日は急に暖かくなりましたね。“花どき”は気候も変わりやすいですから…」と爽やかな明るい声で話しかけてくださいました。
その瞬間、私の脳裏には美しく咲き誇る花々のイメージが広がりました。
慌ただしく目的地だけを告げてタクシーに乗り込み、「次の予定に間に合わなければ」とあせっていた自分の思考が止まったことに自分でも驚きました。
一瞬です。「声」とともに「言葉」には、そんな威力があるのです。
少しずつ寒さが緩み、虫たちだけでなく、私たち人間も外に出たくなる季節です。
人との出会いも増えていきます。あなたはどんな「声(音)」と「言葉」を選択なさいますか。
ユウキアユミワールドアカデミー
クォンタムヴォイスアカデミー
校長 由結あゆ美